舞踏会で、階段を駆け上がる!

4/4
前へ
/19ページ
次へ
夜、ふとんにもぐり込んだわたしは、今日の出来事を思い返しては、恥ずかしくなって悶絶していた。 ずっと夢の中で現れていた王子様。王子様は実は実在して、下校中に偶然、現実世界で会うことができて、わたしの家でテレビを見たり、お話をしたりした。まるで舞踏会のようだった。 そして、帰り間際に。 ー「…あのさ、…また、今日みたいに遊んだりしような!」 恥ずかしそうに視線をそらしながら、言い放って走って行ったオウジ様。 オウジ様も、また遊びたいって思ってくれた。 わたしとなんかもう会いたくないなんて思ってないんだ。 それだけでわたしの心は躍って、もう両思いなんじゃないかって、勝手に想像してしまう。 あの後、なつみさん(義母)サトシさん(義父)が、帰ってきても、ご飯を食べている間もお風呂に入っているときも、ずっとオウジ様の事を考えてしまって、もう忙しかった。 オウジ様は3月生まれだということ。 オウジ様はわたしのひとつ上の高校生だということ。 オウジ様はちょっと照れ屋なことろがあること。 オウジ様は笑うと、目が優しくなって落ち着くということ。 王子様の手は角張っていてたくましいこと。 オウジ様は力が強いこと。 オウジ様はハスキーな声をしていること。 何よりオウジ様はきっと誰よりも優しいということ。 思い出すだけで胸が苦しくて、胸が少しにがいコーヒーを飲んだあとに、甘酸っぱい、オレンジと、レモンをかじったようなそんな気持ちになる。 オウジ様の事を考えていると、毎日の、雑用も、なつみさんとサトシさんからの悪口も、全然、苦じゃなくなった。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加