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夜、ふとんにもぐり込んだわたしは、今日の出来事を思い返しては、恥ずかしくなって悶絶していた。
ずっと夢の中で現れていた王子様。王子様は実は実在して、下校中に偶然、現実世界で会うことができて、わたしの家でテレビを見たり、お話をしたりした。まるで舞踏会のようだった。
そして、帰り間際に。
ー「…あのさ、…また、今日みたいに遊んだりしような!」
恥ずかしそうに視線をそらしながら、言い放って走って行ったオウジ様。
オウジ様も、また遊びたいって思ってくれた。
わたしとなんかもう会いたくないなんて思ってないんだ。
それだけでわたしの心は躍って、もう両思いなんじゃないかって、勝手に想像してしまう。
あの後、なつみさんとサトシさんが、帰ってきても、ご飯を食べている間もお風呂に入っているときも、ずっとオウジ様の事を考えてしまって、もう忙しかった。
オウジ様は3月生まれだということ。
オウジ様はわたしのひとつ上の高校生だということ。
オウジ様はちょっと照れ屋なことろがあること。
オウジ様は笑うと、目が優しくなって落ち着くということ。
王子様の手は角張っていてたくましいこと。
オウジ様は力が強いこと。
オウジ様はハスキーな声をしていること。
何よりオウジ様はきっと誰よりも優しいということ。
思い出すだけで胸が苦しくて、胸が少しにがいコーヒーを飲んだあとに、甘酸っぱい、オレンジと、レモンをかじったようなそんな気持ちになる。
オウジ様の事を考えていると、毎日の、雑用も、なつみさんとサトシさんからの悪口も、全然、苦じゃなくなった。
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