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遠い遠い王子様
🌙ー知らない場所。知らない街。
どこを見たって知らない景色。
それはただ、怖くて、心細くて、なぜだか悲しくて、さみしくて。
もう中学3年生だというのに涙が出てくる。
なんでだろう。ここはどこなんだろう。
あたりは雪がちらついていた。
寒くて、怖くて、うずくまる。
どこが家かも分からない。
え、うそ。これって迷子?
でも今まで何をしていたかも思い出せない。
わたしはどこへ向かっていたのだろう。
「大丈夫?」
と、そんなわたしに声をかけてくれた、通りすがりの王子様。
顔を上げると、にこりとわらって、手を差し伸べてくれていた。
その大きな手をつかみ返そうと、わたしは、手を伸ばした。
そしたら__。🌙
「こら!まだ寝てるの!早く起きてよ!」
わたしの耳に届いたのはハスキーな王子様の声ではなかった。
「え、あ、おはようございます。お母さん。」
「早く準備しないと学校に遅れるわよ。」
お母さんはそう言うと、あっという間にキッチンへと去っていった。
夢…か。現実だったら良かったな。
あの王子様はいったい誰なんだろう…?
あの王子様に触れたかったな。
できればあの夢の続きが今すぐ見たい。
でもこんなわたしなんかの前に王子様が現れるわけがなくて。
わたしは親からの愛も貰えないんだし。
あの人は、わたしなんて、手の届かない、遠い遠い、とっても遠い王子様
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