退園

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退園

 普通の人間です。というお墨付(すみつ)きを病院からもらったりなは、翌日、母に連れられて幼稚園へと向かった。  だがそこで待っていたのは、いつものような温かい笑顔ではなく、冷たい侮蔑(ぶべつ)眼差(まなざ)しだった。  りなは教室に入ることも叶わずに、母と共に先生達が集まっている部屋へと連れて行かれる。 「いくら病院から、“異常なし”なんて検査結果を持ってこられたとしても、受け入れるわけにはいかないんですよ。だって、科学で解明出来ない力を発揮したんでしょう? どれだけ検査しても、異常が見つかるわけないじゃないですか。他の子供達の安全が確保できないことには、園では受け入れることは出来ません。弟の(あや)くんも、同じ理由でお預かりできませんので、退園手続きをして下さい」  そう言って園長から差し出された退園手続き書類を前に、母が唖然(あぜん)とする。  退園? って何だろうと、りなは大人達の顔色を覗った。良くない話なのは何となく分かる。 「そ、んな、いくら何でも横暴じゃありませんか? この子は何も……」 「玲央くん、可哀相に。幼稚園のこともよく覚えていないらしいじゃないですか。りなくんに記憶を消されちゃったんじゃないかって、(もっぱ)らの噂ですよ」 「そんなこと、普通の子に出来るわけないでしょう!! 夢物語じゃないんですから!!」 「あら、お医者様を旦那に持つ有閑(ゆうかん)マダムな貴女の頭の中なら、有り得る話じゃないの?」  くすくすと、嫌な笑い方で先生達が笑う。  何だか嫌だなと、りなは思った。
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