怪しい・・・

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「こちらです」  そう言って、父の後に続いて、玄関先に立っていた3人が入ってくる。  子供達の体に巻かれた包帯を見て、痛々しそうに(まゆ)(じり)を下げた。悲しそうな顔を一瞬見せてから、その心を押し隠すかのように、すぐにその表情を取り(つくろ)って、明るく優しいものに改める。 「こんにちは。初めまして。私、鈴香()()と言うの。こっちの気難しそうなのが(まき)で、その後ろの少し怖い顔のが本田雅史(まさし)。今晩こちらでお世話になるから、よろしくね」  優しそうな顔でニッコリと笑った華菜は、えっと、と考えるような素振(そぶ)りを見せた。 「一番大きい子が、誰だっけ?」  困ったように後ろの二人を見る。  すると牧と紹介された方の男が、溜息を一つついた。 「華菜、今聞いたとこだろ? 一番上の長男がお前と同じ名前の架名くんで、その下が双子で次男のりなくんと、三男の綾くん」 「さっすが、無駄に頭だけはいいわね牧」  教えてもらってルンルンとしている華菜に、無駄にって……と眉間(みけん)(しわ)を寄せる牧と、こめかみを押さえて悩ましい顔をする雅史が、もの言いたげな視線を向けた。 「それにしても、双子というだけあってよく似ていますね。どちらがりなくんでどちらが綾くんですか?」  雅史の問いに、子供達が口を開く前に、父が答えた。 「ベッドに臥せっているのが綾で、床に座っているのがりなです。架名、りな、綾、ご挨拶しなさい」 「架名です」 「りなです」 「綾です」  子供達は口々に自分の名を口にする。  それを聞いた華菜が、にこやかに笑って近づき、「良い子ね」とそれぞれの頭を撫でた。 「大人しい子達ですね」  牧が父にそう言うと、綾の頭を撫でていた華菜が、牧にピッと顔だけ向けた。 「牧の顔が気難しくて、(まさ)の顔が怖いからでしょ。子供の前でそんな顔して、警戒するに決まってるじゃない。めっ!!」  指さして叱る様は、まるでペットを相手にしているかのようだ。 「悪かったな、もともとこの顔だ」 「私もです。付け替えることはかないませんので、諦めてください」  良い大人が、拗ねたようにそんなことを口走る。それを見ていたりなが、花が(ほころ)ぶように無邪気に笑った。
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