一面の・・・

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一面の・・・

 (りゅう)(らん)2324年4月18日。  新緑まぶしい春の暖かな昼下(ひるさ)がり。  高く()んだ青空のもと、軽く汗ばんだ子供達の“かくれんぼ”をする楽し気な声が、活気に満ちた広場に(あふ)れんばかりに響いていた。 「もういいか~い?」 「もういいよ~!!」  春風に乗って、いくつもの声音が返る。  滑り台の下で、腕で目隠しをして数をかぞえていた宮木(みやぎ)は、顔を上げると広場をぐるりと見渡した。  当然、誰の姿も見当たらない。辺りには真っ白な(しろ)(つめ)(くさ)が、一斉に咲き誇って風に揺れている。  さぁ、ゲーム開始だ!  彼は滑り台の下から駆け出し、意気揚々と捜索を開始した。  ――どこに隠れたんだろう?  (はや)る気持ちを抑えながら、キョロキョロと辺りを見渡して、隠れていそうな場所に見当をつける。  ジャングルジム、シーソー、ブランコ、うんてい、ロープウェイ、トンネル。  どの遊具にも隠れる場所はない。唯一隠れられそうなのは、トンネルくらいか。  パタパタと駆け出すと、小さな丸太の陰に人影が落ちているのを見つけた。  ――いた。  嬉しくなってそちらへと進路変更し、丸太の陰を覗く。黒い小さな頭と黄色いシャツが見えて、隠れているのが()()だと分かった。 「()()くんみーつけたっ! ここ、あっちから見ると丸見えだよ!」  見つけたことが嬉しくて、ついつい得意げに指摘する。玲央の悔しそうな顔を見てやろうと、鼻高々に顔を覗き込んだ。  しかし、何だか様子がおかしい。 「どうしたの? 大丈夫?」  覗き込んだ顔は真っ青で、ゼイゼイと荒い呼吸をしている。  隠れる前までは元気そうだった。顔色をちゃんと見てはいないが、少なくともこんな真っ青なことはなかったはずだ。  ――どうしよう。  玲央の体を、「大丈夫?」と声をかけながら揺すった。しかし玲央の意識は朦朧(もうろう)としていて、まともな返事を返さない。 「誰か! 誰か来て‼」  りなの焦った声に、隠れていた友人達がひょこひょこと顔を覗かせて集まってくる。  最初に走ってきた男の子が、「大人を呼んでくる!」と広場の入り口目指して駆けていくと、遅れてやってきた女の子が、「大丈夫かな」と心配そうな目で玲央を見つめた。
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