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一番参っているのは?
子供達が寝静まってから、大人達はここ数日のことについて話し合った。
りなと綾が幼稚園を退園に追い込まれた話。架名が小学校でイジメに遭ったようだという話。そして子供達にはニュースを見せないようにしているが、王宮へりな討伐の嘆願があったという話まで。
両親も所々に包帯が巻かれていることから、どうやら酷い目に遭っていることは一目で想像できた。
この両親は、聡明だった。
王宮内で牧達が置かれている立場を少しの言葉から推測し、完全には助けにならないことを悟った。
それでも牧達を受け入れ、時折冗談も交えながら楽しい時間を過ごさせてくれた。牧達の立場を一旦横に置いて、ただの人同士であるかのような、友人同士のような気軽さでやりとりしてくれる。
まるで苦境に立たされているのだということを、忘れてしまっているかのように。
3人は割り当てられた部屋で寝支度を済ませてから、布団の上で話し合いを継続していた。
「やっぱり普通の子よ? 危険なんて感じないわ」
「発動条件は、陽の光か、植物か。能力のコントロールが出来ていない可能性もあるが、こればかりは専門家の意見が欲しいところだな」
「そうですね。ご両親もりなくんに抱きつかれていても、何も問題はなさそうですし」
う~んと、大人3人は頭を悩ませる。
討伐なんて言葉が出るような危機が迫った感じには、とても思えない。
特殊な能力を発揮したと思われるりなやその弟の綾は、驚くほど精神力が強いのか、はたまた鈍感なだけなのか、ここ数日の仕打ちがあっても最初こそ警戒していたが、慣れてしまえばとても人懐こく、明るい子供達だった。
ただそんな中で、長男である架名だけは様子が違った。
まあこんな状況だったらあれが普通だよなと思うほど、警戒心の強さがあからさまに出ていた。
だから、架名が一番参ってしまっているのだろうと牧も華菜も雅史も思った。
だが、両親の口から子供達の様子を聞くとどうも違う。
一番参っているのは架名ではなく、当人のりなだというのだ。
人見知りだろうか、と3人は考えた。
それでも何となくしっくりとこないので、妙な違和感が喉に痞えていた。
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