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架名の決意 ~助かるためには~
ベッドの中で、架名はじっとその時を待つ。
そして午前0時を回った頃。家の中は、しんっと静まり返った。
――俺は、騙されない。
数日前までは普通だった近所の人達や友達が、“りなが不思議な力を使ったという疑いがある”ただそれだけで手の平を返したように「化け物」と暴言を吐き、暴力を振るい、ヒソヒソ話をしながら冷たい視線を向けるようになった。
そんな状態の時に、面識もない立太子と王女が来るなんて、絶対におかしい。何か裏がある。そう思ったから、架名はこのお客さんの様子をつぶさに観察していた。
捕まえるために、様子を見に来たのだろうか?
何か罪を捏造して、刑罰を加えるつもりだろうか?
それとも厄介なことになる前に、殺してしまおうと思っているのか?
――冗談じゃない。
確かにりなは、不思議な力を発揮したかもしれない。でも記憶を消しただけだ。体に害を及ぼすわけでも、殺したわけでもない。
たったそれだけの理由で、殺されるのだろうか?
人と違う、ただそれだけで。
ただ、それだけの理由で……。
―― 殺されて、たまるか。
架名の心に、小さな火が付いた。
りなが、家族が生き延びるために、架名は必死に頭を使う。
だったら、どうすればいい?
自分達が殺されないために。普通の、何の変哲もない、今まで通りの平穏な生活を送る為には、何をすればいい?
そう考える架名の脳裏に、恐ろしい考えが浮かぶ。
そうだ、こいつらを殺してしまえばいい。
そうすれば、こいつらに捕まることはない。りなも綾も両親も、守ることができる。
テレビで見るような難しいアリバイ工作やトリックは思いつかないけれど、それでも、遺体が見つからなければ殺したことはバレないだろう。
遺体は、庭にでも埋めればいい。死んだ金魚だって、カブトムシだって、そうしたんだ。でも、友達にも近所の人にも、それらを埋めたなんてバレてない。
人殺しは怖いけど、でも、りなの為にはこれしか道がないんだ!!
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