架名の決意 ~助かるためには~

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 小さな弟達はなかなか興奮冷めやらぬ様子だったが、はしゃぎ疲れたのかいつの間にやら眠りに落ちた。  その規則的な呼吸音を数えながら、架名は思考を巡らせる。  父さんの書斎にメスがあった。あれでも人は切れるけど、でも父さんがメスは人を救うために使うのだと誇らしく言っていたから、だから包丁にするんだ。包丁は、動物を殺して(さば)くものだから……。  方針は定まった。  架名はそっと起きだしてベッドから降り、部屋を後にする。  家の中の様子を伺うと、とても静かだった。これならきっと、皆寝ている。  架名は台所に向かった。足音を立てないように、忍び足で階段を下りる。  包丁は、食器乾燥機の側面についているポケットに入っているのだ。  窓から入ってくる月明かりを頼りに食器乾燥機まで辿り着き、そっと食器乾燥機から包丁を取り出した。  ――これ、もし失敗したらどうなるんだろう?  家族全員、殺されるんだろうか?  でも罪を犯したのは自分だけだから、時代劇みたいに嘆願すれば、家族の命は助かるかもしれない。  包丁を握りしめながら、自問自答する。  やっぱりやめるか?  やめれば、りな以外は生き延びられるかもしれない。でも、りなは殺されてしまうだろう。  ――そんなの、ヤだな。  失敗しなければ良いのだ。確実に殺してしまえば家族全員、今まで通り生活できる。  架名の決意は、固まった。
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