架名の決意 ~助かるためには~

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 次の日の昼過ぎに、牧達は王宮へ帰って行った。  りなも綾も、沢山(たくさん)遊んでくれた人達が帰ってしまうことをすごく残念がった。  華菜がまた遊びましょうねと言ってくれたので、「うん」と嬉しそうに笑って見送る。  牧と架名は、昨晩のこともあって、どうやら仲良しになったようだ。  昨日は一切笑わなかったのに、今日はいつも通りに笑っている。  何があったのだろうとりなも綾も思ったが、それを問うことはしなかった。ただ、架名がいつも通りに戻ったことに、ホッとしたのだった。      ❋      ❋      ❋  牧達は王宮へ帰ってすぐに、報告書を作成した。 「一日様子を見ていたが、特に危険を感じることはなく、(いた)って普通の子供だった。桜沢病院での精密検査も異常は見当たらないとのこと。異能を疑うのであれば、一度西城家に預けて専門家の意見を求めるべきだ」  口頭でもそう報告し、討伐(とうばつ)依頼(いらい)棄却(ききゃく)を立太子と王女の連名で国王に求めたのである。  それからもしもの為に、地下牢及び裁判等で下った判決の執行停止と、囚人への拷問の禁止を通達した。  それは、太子や王女の権力で一時的に止めることが出来ると法律に明記されていることだった。牧は、架名との約束を破ることのないように、可能性のある未来を想定して、打てる手を早期に打ったのである。博明に相談していたとはいえ、その先を読んで先手を打つ手腕は、実に見事なものだった。
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