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収容
4月23日。午後2時。
牧達が王宮へ帰った翌日。一家はどこにも出かけることなく、自宅で過ごしていた。
今朝、父が仕事を休んだので「どうして?」とりなが訊くと、「ちょっと論文を書けと言われたから」と書斎に引き籠って何やらゴソゴソとしている。
りなと綾はお昼寝中。架名は学校の勉強が遅れてはいけないと、母が教科書を開かせて家庭教師をしていた。
ピンポーンと玄関のチャイムが鳴る。
母が「は~い」と返事をして、パタパタと玄関へ駆けて行った。
暫くして、母と男が言い争うような声が聞こえてくる。そして、ダカダカと複数の大きな足音が、家の中を縦横無尽に歩いた。
「捕縛命令が出ている。来なさい」
恐怖で身が凍る架名に、やってきた男はそう言った。そして架名の腕を掴むと強引に立たせ、玄関へと連れて行く。
母は玄関で手錠をかけられ、別の男に拘束されていた。
二階からは、父が男と会話をしている声が聞こえてくる。どうやらお昼寝中のりなと綾に、もう少し厚手の服を着せようとしているようだ。
暫くして、手錠をかけられた父と物々しい雰囲気に怯えるりな、状況が良く分かっていない綾が下りて来た。
「これで全員か。連れて行け」
強引に腕を引っ張られて、りなが「痛い」と声を上げる。
「子供達に乱暴しないで!!」
母が声を上げた。
「うるさい。早く車に乗れ」
乱暴に男がそう言い、外に止まっていた護送車に乗せられる。窓に柵がついている車を見て、りなも綾も、それが普通でない車だと理解したようだった。
「どこ、いくの?」
車窓から外を眺めていたりなが、不安げに父を見上げて問う。
「どこだろうな。父さんも分からない」
りなに応えた父は、何を考えているのかずっと怖い顔をしたままだ。
重苦しい雰囲気に呑まれたのか、りなはそれ以上口は開かなかった。
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