収容

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 着いたのは王宮だった。  (ただ)し、連れて行かれた先はその地下。  お前はこっちだと、途中で母だけ別の所へ連れて行かれる。 「将也!!」 「杏里、大丈夫だから」  落ち着いた声で父が一つ頷くと、母は唇を引き結んで頷いた。  ヒンヤリとした無機質な廊下を歩かされて、一つの部屋へと入れられる。 「着替えろ」  居丈高(いたけだか)な男にそう言われて、バサッと服が渡された。  その服のサイズを確認して、父が子供達に服を手渡す。  さっと着替えた父は、もたもたと手こずる子供達の着替えを手伝った。  まるで入院着のような、甚平(じんべい)のように前開きの、紐で止めるタイプの服だ。大人サイズなので子供達には大きい。父が(そで)とズボンの(すそ)をクルクルと巻いて、それぞれの体に合うサイズに直してやった。  着替え終わると、ビニール製のタグを手首に巻かれた。名前が書かれ、バーコードが付いている。 「こっちだ」  部屋から出されて、再び無機質な廊下を歩かされる。靴をスリッパに履き替えさせられたので子供達はサイズが合わず、ペタペタと音を立てて歩きにくそうに歩いた。  そして大きな分厚いガラスがはめ込まれた、両開きの自動ドアをくぐる。  するとそこには、両側にずらりと鉄格子のはまった部屋がいくつも並んでいた。 「お前はこっちだ」  最初に父が、傍の部屋に放り込まれた。 「子供達はまだ小さい。せめて一緒に!!」 「駄目だ」  牢の中から父が頼んだが、居丈高(いたけだか)な男は聞く耳を持たなかった。そして子供達に進めと(うなが)す。 「お父さん……」  りなが不安な声で父を呼んだ。 「りな」  父が両手で(てつ)格子(ごうし)を握り、子供達に目を向ける。(おり)に入れられた、心配そうな顔をしている父はまるで、暴君に囚われた奴隷(どれい)のようだ。 「ほら、歩け」  ()き立てるように、男が威圧(いあつ)する。 「りな」  架名が、りなと綾の手を握って歩き出した。  随分奥まで歩くと、最初にりなが、次に綾が、そして最後に架名がそれぞれ空いている別々の牢へと入れられた。  ガチャンッと閉まる金属の音は冷たく、重々しく廊下に響く。  コンクリートの上に(じか)にひかれた布団が一つと、トイレと洗面台しかない部屋。温かみなど一切ない。電気はついているのにどことなく暗さが漂っていた。  りなはちょこんと布団に座ると、膝を抱えて丸くなった。  ――もしかして僕が、変な力を使ったと思われてるから……?  だから家族みんなが捕まって、牢屋に入れられたのではないか? そう、りなは考えた。  ――どうなっちゃうんだろう……?  (さび)しさを(まぎ)らわせるように、りなは膝を抱えたまま小さく小さく(うずくま)って、ここから出してくれるその時を、祈るように待つしかなかった。
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