32人が本棚に入れています
本棚に追加
着いたのは王宮だった。
但し、連れて行かれた先はその地下。
お前はこっちだと、途中で母だけ別の所へ連れて行かれる。
「将也!!」
「杏里、大丈夫だから」
落ち着いた声で父が一つ頷くと、母は唇を引き結んで頷いた。
ヒンヤリとした無機質な廊下を歩かされて、一つの部屋へと入れられる。
「着替えろ」
居丈高な男にそう言われて、バサッと服が渡された。
その服のサイズを確認して、父が子供達に服を手渡す。
さっと着替えた父は、もたもたと手こずる子供達の着替えを手伝った。
まるで入院着のような、甚平のように前開きの、紐で止めるタイプの服だ。大人サイズなので子供達には大きい。父が袖とズボンの裾をクルクルと巻いて、それぞれの体に合うサイズに直してやった。
着替え終わると、ビニール製のタグを手首に巻かれた。名前が書かれ、バーコードが付いている。
「こっちだ」
部屋から出されて、再び無機質な廊下を歩かされる。靴をスリッパに履き替えさせられたので子供達はサイズが合わず、ペタペタと音を立てて歩きにくそうに歩いた。
そして大きな分厚いガラスがはめ込まれた、両開きの自動ドアをくぐる。
するとそこには、両側にずらりと鉄格子のはまった部屋がいくつも並んでいた。
「お前はこっちだ」
最初に父が、傍の部屋に放り込まれた。
「子供達はまだ小さい。せめて一緒に!!」
「駄目だ」
牢の中から父が頼んだが、居丈高な男は聞く耳を持たなかった。そして子供達に進めと促す。
「お父さん……」
りなが不安な声で父を呼んだ。
「りな」
父が両手で鉄格子を握り、子供達に目を向ける。檻に入れられた、心配そうな顔をしている父はまるで、暴君に囚われた奴隷のようだ。
「ほら、歩け」
急き立てるように、男が威圧する。
「りな」
架名が、りなと綾の手を握って歩き出した。
随分奥まで歩くと、最初にりなが、次に綾が、そして最後に架名がそれぞれ空いている別々の牢へと入れられた。
ガチャンッと閉まる金属の音は冷たく、重々しく廊下に響く。
コンクリートの上に直にひかれた布団が一つと、トイレと洗面台しかない部屋。温かみなど一切ない。電気はついているのにどことなく暗さが漂っていた。
りなはちょこんと布団に座ると、膝を抱えて丸くなった。
――もしかして僕が、変な力を使ったと思われてるから……?
だから家族みんなが捕まって、牢屋に入れられたのではないか? そう、りなは考えた。
――どうなっちゃうんだろう……?
寂しさを紛らわせるように、りなは膝を抱えたまま小さく小さく蹲って、ここから出してくれるその時を、祈るように待つしかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!