地獄の始まり

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地獄の始まり

 翌日。  りなは牢から出されると、年季の入った真っ白な壁の続く、薄暗い照明しか点いていない長い廊下を歩かされた。病院のような雰囲気の廊下を進み辿り着いた先には、病院ではありえない重たそうな鉄の扉が一つある。  ギイィと不気味な音を立てて開かれた扉の先には、無機質な部屋。そこに、一人の男が椅子に縄で(くく)りつけられて座っていた。 「広場でお友達にやったように、この人にしてごらん。その力を解明するために、少しずつ検査していくことになるからね」  椅子に(くく)りつけられた男の傍に立つ、白衣を着た、どこか宇宙人を彷彿(ほうふつ)とさせる顔をした好々爺(こうこうや)が、りなにそう説明した。  最初に採血をされて、椅子に(くく)りつけられた男の前に立たされる。  ――広場で、玲央くんにやったように……?  あの時は確か、額に手を当てて……。  りなは傍に置かれた台に乗って、男の額に手を伸ばした。  ペタリと手を当てたが、何も起こらない。 「ちゃんとやれ!!」  りなを牢から連れてきた居丈高(いたけだか)な男に、ピシャッと(むち)で叩かれた。背中に、斜めに激痛が走る。 「痛っ……っっ!! だって分からないよ」  そもそも自分がそんな能力を使ったのかどうかすら怪しいのだ。やれと言われてやれるわけがない。 「ほうほう、そうか。まだ能力に目覚めたばかりなのかもしれん。そうか、現場には(しろ)(つめ)(くさ)があったんだった。お~い、用意しておいた花を持って来てくれ」  そうして(しろ)(つめ)(くさ)の花が運び込まれる。りなの周りには、あの広場と同じように雪のような純白の花が咲き乱れていた。  再び、りなは男の額に手を当てる。熱を測るようにそっと触れてから目を閉じ、意識を集中させた。すると風もないのに空気が動く。そしてりなの知らない景色が、脳裏に走馬灯(そうまとう)のように流れては消えていった。
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