地獄の始まり

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 綾も同じように牢から出され、りなと同じような実験をさせられた。だが、何も変化は起きない。 「出来ない訳ないだろ。死ぬ気でやれ!!」  居丈高(いたけだか)な男に(むち)を振るわれて、綾は「痛いって言ってるだろ!!」と怒りを(あらわ)にした。そのせいで更に(むち)で叩かれる。背中だけでなく、腕や足にも赤く蚯蚓腫(みみずば)れが走った。 「一卵性の双子だから、同じ能力があってもいいだろうになぁ」  宇宙人好々爺(こうこうや)が、まだ発現していないのかな? と、首を傾げた。 「発現前と後で比べるのに丁度良いか。よし、隣の部屋へ」  そして連れて行かれた隣の部屋は、まるで手術室のような部屋だった。  四肢(しし)手錠(てじょう)拘束(こうそく)し、ベッドに固定される。上半身の服をはだけさせられると、宇宙人好々爺(こうこうや)ともう一人、皮膚表面がボコボコとしたスズガエルのような顔のジジイが、エプロンとマスク、キノコの(かさ)のような帽子をかぶって、綾の傍へとやってきた。 「ちょっと検体を取らせてね」  ――検体?  病院で検査をする時に取られる検体は、尿や血液だ。だがこの状況で検体とは、何を取るつもりだろう?  そんなことを思う綾の目に、見たことのある刃物がきらりと光った。 「何、するの?」 「ちょっと肉を取らせてね」  そう言うと綾の腹にメスの刃が当てられ、肉に押し付けながら引く。ツプッと皮膚(ひふ)()けると、真っ赤な血が(たま)になって()き上がり、そして形状を(たも)てずに(そく)腹部(ふくぶ)にたらりと()れた。 「いっ……ぎゃあぁぁぁああ!!!」  麻酔(ますい)もなしに、腹の肉を(えぐ)られる。  断末魔(だんまつま)のような叫びが、部屋中に響いた。  あまりの痛みに暴れもがくが、手足を拘束する手錠がガシャガシャと大きな音を立てるだけで、自由にならない。  生暖かい血液が、腹の上で左右に分かれて肌を伝い、背にもその感触が広がった。 「()きの良い魚のようだ」  うきょきょきょきょと笑う好々爺(こうこうや)の声に吐き気を覚えながら、綾は激痛に耐え切れず意識を失った。
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