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 一則(かずのり)もまた、正統な王位継承者であり、王位を継ぐのに血筋には問題はない。  大臣達は、一則の味方ばかりした。(したが)っていれば、甘い蜜が吸い放題だ。  逆に逆らえば、没落するのは目に見えている。ただ没落するだけならいい、最悪命がないのだ。  そんな状況なので、どんなに亡き前国王の意向があったとしても、()婿(むこ)で元一般人である牧のことなど、まるっと無視した。  たとえ一則の即位が謀反(むほん)を起こした末のものだとしても、今は彼が国王だ。単なる立太子の牧は、いつ暗殺されるか分からない危険な立場だった。  牧自身はと言えば、別に国王になりたいわけじゃない。  一則が国王になりたいと言い、真っ当に統治してくれるのなら別にそれでも良かった。  が、選民思想の一則が真っ当な統治などしようはずもない。  国を治めるために、国民が豊かな生活を送ることができるように行われるはずの政策は、自分達が贅沢をするために、また自分達とは意見の食い違う者達を排除するためにばかり行われ、弱者は切り捨て、自分に(くみ)しない者達はどん底に叩き落し、奴隷のように扱った。  国は日に日に荒廃し、国民はその独裁政権に怯え、世の中は(すた)れ冷え切っていった。まるで魔女裁判を待つかのように、誰かに自分を売られないように、お互いが監視し合う日々が始まる。  こんな状態では国民は安心した生活を送れず、国も安定しない。  “これではいけない”と牧は謀反(むほん)になりかねなかったが、信頼できる側近を作りながら、国王を王位から引き()り下ろす為の準備を着々と進めていた。  一刻も早く自分が王位を継いで、まともな国に、少なくとも華菜の両親が生きていた頃の状態にまず戻すことを目標に、秘密(ひみつ)()に動いていたのだった。
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