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「佐々木さん、そういうの似合いますね。白いベランダにレースのカーテンに紅茶でアフタヌーンティー、みたいな」
「え、本当? 優雅っぽい?」
「優雅かはともかく」
佐々木は「えー」と口だけで不満を表明した。リラックスしているのか、恐れ多くも日本遺産の手すりに頬杖をつき、にこにこしてこちらを見ている。まだ昇りきっていない太陽の光が、彼女の笑顔を照らす。温かい光に透けた髪と瞳が綺麗で、中根は思わず息を飲んだ。
「……写真」
「え?」
「写真、撮ってもいいですか」
中根が急にカメラマンを申し出たので、佐々木は少なからず驚いたようだった。もともと大きい目がさらに開いている。
「嫌ですか?」
「え、えっと、ううん! でもなんか、照れるね。最近自撮りばっかりだったから……」
佐々木は眉を下げて「じゃあお願いしようかな」とスマホを取り出そうとした。
「あ、いいですよ、俺のスマホで」
「えー。加工アプリ、入ってないでしょ?」
「なくても十分ですよ」
佐々木はいやいや、現代人だから、フィルター必須だから、と少しごねていたが、中根がレンズを向けると観念したように居住まいをただした。
「可愛く撮ってよお」
「任せてください。っていうか、なんで棒立ちなんですか。さっきのままでいいですよ、ほら肘ついて。笑って」
「肘ついて、って! 注文細かい」
言われるままに体勢を戻した佐々木が、変なの、と笑う。
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