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店は中華だった。渚と睦美がよく行く店で店主の夫婦とは顔見知りのため隅の席を特別に予約できたと話した。4人で会えば同性愛者に関わる話が出るはずで、周囲に人がいるとやりにくい。しかし4人で個室だと緊張しそうで渚はその店を選んだ。円卓がそれぞれ離れて置かれ、ついたてで1つ1つが仕切られている。
「中華は重いかなって思ったんだけど」それだけが心配だったが、
「平気」と英司は首を振った。「こっちはふたりとも朝からなんもで」
「よかった」
船堀での待ち合わせは英司からの提案で、知らない街をウロウロし入る店に迷うよりいい、こっちが出向くかわりに店を選んでおいてほしい、と渚に頼んだ。
店はにぎわい12時前なのにほぼ満席。家族連れが多い。
まずは料理を注文し、その後の会話は英司と渚が中心になる。
「いいお店ですね」
「買い物がてら来るんです。ここで食べたあと夕飯の材料買って帰って」
「一緒に住まれてどのくらい?」
「秋で2年かな。ね」と渚が見ると、
「うん」と睦美はうなずく。
「いいな」と英司は微笑のあと「石崎さんは旅行会社に、お勤めなんですよね」と話を振る。渚にそう聞いていた。
「て言っても契約社員です」と睦美は首を振る。「正社員じゃなく」しかし卑下するような感じはなく自然な微笑だった。「窓口カウンターで予約とか、相談とか」渚に比べると小柄で痩せていて童顔だが愛嬌がある。
「松山さんはCGの会社にお勤めって伺いましたけど」と渚はお返しのように話を振る。
「ええ、テレビ局の関連の」と明がうなずくと、
「すごい」と目を丸くする。
「なんも」
「ドラマのCGとか?」
「ドラマは滅多ないけど、バラエティのオープニングとか、テロップとか」
「へぇ、今までどんな番組を担当されたんです?」
「いろいろ、次から次にで、そうだな――」と明がいくつか番組名をあげると渚よりも睦美が知っていた。渚は仕事が忙しくテレビをほとんどリアルタイムで見られない生活で、好きな番組は録画視聴だった。
***
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