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集合
明が承諾したのは週末。
「会ってもいいよ、このあいだの話」
それで英司は渚に連絡し、4人のスケジュールを調整した。会うことになったのは翌々週の日曜日。船堀駅前で昼の11時半に待ち合わせた。
渚と睦美は緊張で15分前に来てしまい、英司と明も慣れない乗り継ぎで10分前に着いた。指定の場所に行くと渚が日陰にいて小さく手をあげ、
「おはようございます」と英司は声をかけて向かう。
「おはようございます」と渚は会釈する。見合いの時ともプレジールの時とも違うカジュアルな夏服で、
「早めに着いちゃって待つつもりだったんですが、お待たせして」と英司は笑顔で会釈したが硬くなった。この1週間に二度電話し、だいぶ打ち解けたつもりだったが私服の渚は新鮮でまた距離があいたような、他人に戻った気がする。
「ううん、わざわざすみません」と渚は自然な微笑だった。おととい梅雨が明けるといきなり酷暑で英司はポロシャツにアンクルパンツ、今までのスーツ姿やワイシャツ姿とはかなり違う服装だったが渚は特に反応しない。
「えーと」と英司は場の進行に努める。「松山君。松山明」とあとから来た明を振り向く。
「松山です」と明はお辞儀し横に来る。
「はじめまして。水谷と言います」
「水谷渚さん」と英司が言い足すと、
「はじめまして」と明はもう一度お辞儀する。顔が緊張している。
「彼女は」と渚は振り返り「石崎さんです。石崎睦美さん」と紹介する。
「石崎です」と渚の陰にいた睦美は横に並ぶ。「はじめまして」と硬い表情でお辞儀する。
「はじめまして」「よろしく」と言い合い、お互い相手のどこを見ていいか困惑の空気のあと、
「暑いですね」と渚は仕切り直すように言う。「お店はこっちです。すぐそこ」と歩きだす。
***
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