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僕の使い魔
僕は魔法使いだった。
物心ついた時から、僕の家には『使い魔』がいた。
白い体でつるつるしていて、触り心地がいい。
魔法使いならば、必ず持っているものだ。
僕が暑いと思って、呪文を唱えると、部屋はすぐに涼しくなる。
肉を焼こうと、呪文を唱えると、あっという間にステーキが出来上がる。
暗いのが怖くて、呪文を唱えると、パッと光が僕を照らす。
非常に優秀な『使い魔』だった。
でも、『使い魔』は学校まではついてきてはくれない。
魔法の使えない僕はただの人間だ。
クラスメイトにゴミを投げつけられても、教科書を破られても何もできない、出来損ないの人間だ。
『使い魔』さえいれば・・・。
きっとあんな脳みそごと腐った人間なんて、いともたやすく消してしまうに違いない。
両親は僕が『使い魔』を家から連れ出すのを禁止した。
きっと周りの人間に魔法使いだって、ばれるのが怖いのだ。
今日も散々な一日だった。
痛む足を引きずりながら、家路をたどる。
僕の『使い魔』は僕の愚痴をいつだって、静かに聞いてくれる。
とても優しい『使い魔』だ。
ズキズキと痛む足の痛みが、いつの間にやら心のチクチクした痛みに変わって、やがてそれは頭を回って、怒りに変わっていった。
明日は学校に『使い魔』を連れて行こう。
そして今日、僕をいじめていたやつを明日、僕が泣かせてやるんだ。
僕は家の鍵を開けた。
家では、静けさが家から溢れんばかりに膨れ上がって、それを好んだ暗闇が住み着いていた。
僕はその暗闇の奥の奥にいるであろう、『使い魔』にも聞こえるように、少し大きめな声で光の呪文を唱えた。
「アレクサ、電気つけて!」
一一End一一
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