この道を君と歩む

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「何となくさ、羽田が今日ここに来るんじゃないかと思って早起きした。アンタ大事な試合の日っていつもそうするって言ってたから」 「まさか励ましに来てくれたの?」 「そのつもりだったけど、いつまでもモジモジうじうじとした背中見てたらだんだんムカついてきたから気合入れなおしてやることにした」 「あっ、それで僕お尻蹴られたのか……」  早朝にも関わらずわざわざ早起きしてここへ来た目的が激励から叱咤に変わったことを告げた彼女の目は本当にどこか怒っているようだった。  きっと橋の上で黄昏る僕の背中は滝沢さんを苛立たせる程に情けないものだったのだろう。 「対局前に覇気の無い所見せてごめん……でも、どうしても想像することが出来ないんだ」 「想像できないって何がよ? 勝ち筋とか戦術とかそんな話アタシにされても解んないよ。そもそも将棋のルールすらよく覚えてないし」 「そうじゃないんだ。そうじゃなくて……」  僕だってプロを目指す棋士の端くれだ。ちゃんと相手の戦術とその対策くらいは勉強してある。  予習は完璧以上に行った。それでも不安な気持ちが払拭できない。
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