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「今日はどうやって過ごそうか」
人生最後の日、大勢の人は家族や大切な人と過ごす場合が多いようだ。けれどマリにはそんな人は――
「ケンだけ、いた」
幼馴染のケン。小さい頃から当たり前のように隣にいた大切な人。けれど、決して恋人になるような関係ではなく、腐れ縁のような関係だった。お互い就職して会う機会は減ったが、連絡は取りあっていた。ケンには自分が明日命日だとは伝えていなかった。
マリが携帯でケンの番号を呼び出そうとしたとき、携帯が鳴った。ケンからだ。
「もしもし?どうしたの、こんな朝から」
「マリ、今から会えないか?」
ケンからの提案にマリは驚く。ケンの声はいつものふざけた調子ではなく、どこか緊張感が伝わってくる。
「いいよ。どこで?」
「小さい頃によく遊んでいた公園があっただろ。そこで俺に会うまで電話切らないで」
「いいけど・・・何かあった?」
「別に、ただちょっと付き合って欲しいだけだ」
マリは手早く用意をし、足早にケンと何気ない話をしながら公園に向かう。
公園にはケンがすでにいた。マリは電話を切って小走りで駆け寄る。
「おう。遅いじゃないか」
「会っていきなり失礼ね。相変わらず、元気そうで」
ケンの元気そうな姿を見て、電話越しの緊張感が杞憂だと胸をなでおろす。
「そっちこそ。それじゃあ、行くか」
「行くってどこに?」
「今日一日、俺に付き合ってくれ。代わりに飯おごるから」
ケンは楽しそうに言った。
マリはご飯をおごるという言葉につられ、ケンの提案を受け入れることにした。
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