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紙のボールを取ってしまったのだ、取りに来た男子生徒は、ニヤケ顔で「ありがとう」と馬鹿にしたように礼を言う。そして、後ろで遊んでいた男子数人のクスクスと、笑う声。笑い声に混じえて「あーあ、とった」「うわー、菌が移ったー」などなど、それを見ていた、いじめグループの女子達は「可愛そう」と言った。
ちなみに、「可愛そう」と誰に対して言ったかは、紙ボールを拾ってあげた私では、なく、紙ボールをもらった男子生徒に対しての可愛そうだ。
馬鹿ないじめグループの女子生徒は、「あ、可愛そうなのは、〇〇君だから」と余計な一言付きだ。
私の心はどんどん壊れていく。そして、何よりも許せないのは、この現状を知る、いい子ちゃん面をするクラスメイト達だ。
見て見ぬ振りが一番タチが悪い。
そんな、地獄を過ごしていった。
私の家は、少々複雑な家庭だった。母親は私が幼い頃に離婚し蒸発、二世帯の住居だったため、実質祖父母に育てられていた。
この頃、私の父親は“ガン”で入院生活を送っていた。そんな、大変な時期に孫娘がいじめに遭っている、なんて、口が裂けても言えなかった。
だから、家では何食わぬ顔をしていたし、はっきり言って家が唯一の休息地帯だった。
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