きみはシロじゃない

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 次の日、シロと別れた。彼女に案内されるまま運転した先には、河原があった。車をとめ、二人で降りる。 「とっても楽しかった。ありがとうね、お兄さん」  言った彼女はもう、あのワンピースを着てはいない。灰色のパーカーにジーンズ。  朝日を浴びるその顔は、今にも壊れそうで。 「俺も楽しかったよ」  そう答えるので、精一杯。  あのポスターを思い出す。彼女がいなくなった場所は、きっとこの近く。  言葉通り、彼女は強くなった。だから、帰る。 「じゃあね」  ひらり彼女は手をふった。名残惜しげに笑っては、俺に背を向け歩き出す。 思わずその手を掴みそうになる。  でも。  それは、いけない。俺が彼女を連れ去ったところで、なにも…。 「―――なあ!」  気づけば叫んでいた。 「また、遊ぼう。…んで次は、自分のこと…シロなんて言うな」  ふいっと彼女は振り向く。驚いた顔に俺は微かな声で、 「お前はシロじゃない。シロになんて、ならない」 「…そうだね」  彼女の顔は、緩んでいた。 「私は、シロじゃない。うん」  言い聞かせるように頷く。パーカーの帽子をかぶり、 「この河原、綺麗でしょ。お気に入りなの」  ただそれだけを言って、再び歩みだす。微笑み、 「またね、おにいさん」 「あぁ。また、な」
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