きみはシロじゃない

6/7

4人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 あれからどれだけの日々が過ぎたのか。  幾度も本屋に立ち寄ったが、彼女はいない。  貼ってあったあのポスターも回収されていた。  彼女は、帰った。きっと。  自分のことをシロといった彼女。  ―――『いっぱい傷ついて、死んじゃった』  どうか…どうか。  繰り返し願った。願って願って、願った。  強くなった彼女はシロになんて、ならない。 祈るばかりで。  震えていた肩を、あの肌を、思い出してしまう。  凡庸と記憶を追いながら、俺は彼女と巡った景色の地を幾度となく踏んでいた。  気づけば一年も経っている。嘘のように、時が流れていた。  どこかで会えるのではないかと思っていた。でも会えなかった。  俺の家から遠くはない場所だ。何気なく見かけることができるのではと期待した。  でも。  引き止めるべきだったのだろうか。あのまま帰さず、連れ去れば。  彼女があれ以上傷つくことは…なかった? 「いや…」  首を振る。あの本屋の前。  彼女と別れた日は、去年のこの日。  信じなければ。彼女が強くなったことを。  足が動いた。今日が終わりかけている。  ほんの少しの可能性にかける。  あの場所へ。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加