ゴーストドッグ

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 満員電車に揺られて渋谷に向かう。後藤さんたちは改札こそ透明になったが後は姿を現して、乗客をアッと驚かせていた。タロウは流石に電車の中でも透明だったが、それでも後藤さんグループは人の目を集めた。ハロウィンだったから良かったものの平日だったら大変だ。みんなでスクランブル交差点に行くと、やはり想像通りの人込みに感嘆する。小さな子供とお母さんらしき人が赤いデビルの恰好をして横ぎった。都会に来たので力が入っていたが、ほのぼのしい風景にホッとする。すると、赤いデビルの女の子が芳香の方を見てポカンと口を開けた。 「お父さん・・・」  えっ、よく見ると後藤さんを見ているようだ。 「お父さんだ。お父さん」 「ううう、はるみ」  えっ、もしかして。 「はるみ!ああ、いけない」  後藤さんはハッと芳香の後ろに隠れた。 「芳香ちゃん、俺は家族の前に姿を現さないことを条件に神様にゴーストにして貰ったんだ」  なんと!そうだったんだ。芳香は後藤さんの手を引いてスクランブル交差点から脇の道に逸れた。空くんが慌てたように追いかけてきた。 「どうしたの?」 「後藤さんのね、娘さんがいたの」 「はるみに会えたなんて良かったなあ」  後藤さんはポロポロと涙を落とす。 「良かったですね」 「ああ、ハロウィンに感謝せねばいかん」  空くんがニッコリ笑って目を細めた。 「来年も来ましょうよ。芳香ちゃんも一緒に。あ、また言うけど僕と付き合ってください」 「ワン」  タロウが2人の周りを走り回った。芳香はペコリと頭を下げて「宜しくお願いします」と言った。そうして「ハロウィンに感謝だね」と言いながら後藤さんと握手をした。  終わり
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