歯が光る

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 枕元に置いておいたスマートフォンのアラームに起こされる。  そうだ。昨日は歯が光っていたんだ。僕は鏡を見るが明るいからか分からない。仕方がない。そう思って部屋の雨戸を閉めて暗闇にする。鏡を持って顔を見た。 「うわあ、マジかよ!」  やはりまだ治っていなかった。  肩を落として1階に行き、赤いギンガムチェックのテーブルクロスが敷いてあるテーブルに突っ伏す。 「ユキタ、どうしたの?」  お母さんがホットコーヒーを置いて前に座る。歯が光ることを伝えたほうがいいのだろうか。でも歯医者に連れていかれて総入れ歯にされたら・・・。 「いや、何でもないよ」 「そう、パンはピーナッツバターでいいの?」 「うん」  僕は頷いてからトマトジュースを飲んだ。朝はパンだけなので野菜も補給しなければいけない。ああ、でもこんな時に悠長に野菜摂取のことなど考えている場合か。 「そう言えば、来週はデートでしょ」 「そうだよ。杏里ちゃんと千葉まで行くんだ」 「ようやくユキタも彼女が出来るのね」  そうだけど、お化け屋敷で振られる可能性が否めない。どうにかそれを拒否ろうか。だが、夜までいて花火も見たい気持ちがある。花火をみて笑っているときに歯が光っていたら引かれるだろう。  家から学校までは歩いて20分の距離だ。電車通学なんて怠いと思っていたら運よく近所の公立高校に入学出来たのだ。 「おはよー、ユキタ」  通学路を歩いていると親友の啓吾くんが挨拶をしてくれる。 「おう!今日は冷えるな」  朝晩がすっかり寒くなった。
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