歯が光る

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 参った。夜中に目が覚めて、暗闇の中、手探りでトイレにいった後に手を洗おうと洗面所で自分の顔を見たら歯が光っていた。歯は緑がかっていて蛍光塗料でも塗ったみたいに暗闇に浮かびあがっていた。 「うわあ、なんだ!?」  僕は驚いて歯を剥いて至近距離で鏡を見た。歯の付け根から光っている。唇を掴み上に持ち上げて自分の顔と対面する。鏡に映った歯はお祭りなんかで光っているブレスレットのようにほんわかと輝いていた。  マジか。  歯医者に行った覚えがあるなら差し歯が光ったという可能性があるが、これは僕の歯だ。何時からこの状態なんだろう。今日の夜に急に光りだしたかな。もしくは夜だけか。友達に指摘をくらったことがないので昼間や明るいところでは大丈夫なんだろうと思案した。  参ったな。  僕は部屋に戻って頭を抱えた。歯医者に行って相談するか。でも歯が光るなんて何の病気なんだろう。抜かれて総入れ歯にされたら溜まったもんじゃない。  困ったことになったぞ。このまま隠しとおすか。今までバレなかったんだから無理ではないことのように思える。  ああ、そうだ。でも。避けて通れない難関があった。  来週の土曜日にずっと好きだった杏里ちゃんと千葉の遊園地に行くことになっている。まだ付き合ってはいないが初デートだ。昼間の約束だが、遊園地の中には西洋のお化け屋敷がある。小さな時に家族で行ったことがあるが真っ暗闇の中にドレスを着たりタキシードを着たおばけがわんさかいた。あの暗闇の中なら確実にこの歯は光って浮かびあがる。  どうしよう。僕はまた頭を抱えた。そのまま布団の中で悩んでいるといつの間にか寝てしまった。
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