結婚相談所では

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縁遠い愛美は良縁を求め結婚相談所に入会した。そこではパーティーが開催され、男女独身証明を提出し、男性は給与証明も確認される。愛美は数回ホテルでのパーティーに参加してみたが、なかなか結婚を意識するような相手には遭遇していなかった。女性会員とはメール交換はしていた。しかしめげずにまたトライしてみたら、同じ北海道出身の男性会員が居て、交際してみたいと声をかけようとしたら、前回パーティーで知り合った女性会員篤子が、「私、あの彼に申し込むわ。」と先に言われてしまい、愕然となり結局、会話することにも躊躇してしまい、「篤子さんが北海道へ行く覚悟あるなら交際してみたら良いわ。」と言ってしまった。二人は楽しげにオードブルのお皿とワイングラスを持って笑いながら、空いて居た二人がけの席にもう決定のような雰囲気が伝わり絶望感の奈落の底にいた。最後まで男性会員正志とは何も言えずに会場を後にした。そうして女性会員とは絶対に友達にはならないと決意した。その夜は不思議な夢を見た。教会の鐘が鳴り響き、純白のウエディングドレスのファスナーがなかなか上がらなくて焦っている隣に何故か正志が居て、「結婚はダイエット成功してからの方がベストだったね。」と言いながらクスクス笑っていた。愛美はやっとの思いでファスナーを上げで、「ヤッター!」と叫んだところで目覚めた。母親がドアをノックしていて、「愛美、結婚相談所から電話よ。」と叫んでいた。「何、こんな朝早くから。」「早くないわよ。何時だと思ってるの。日曜日だからっていつまでも寝てるんじゃないわよ。」と急かされて電話に出たら、愛美の担当者から、「会員正志さまから交際申し込み御連絡きておりますが、了承されますか?昨夜はお話したかったようですが、出来なかったとの事です。」愛美の頭の中には教会の鐘が再び鳴り響き、正夢だ。ダイエットしなくっちゃ。とジャージパジャマのまま外に飛び出し、「はーい。勿論交際しまーす。」と固定電話のコードレス受話器を耳に当てながら、やわらかな春風の中を駆け出した。
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