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午後九時を過ぎていた。
「なんだ、あれ?」
タエは通話が切れたパソコンのディスプレイを顎で示した。今さら、株主たちは何をしようと言うのだろう。
「うん、鞠村まりえも、本田孝夫も、本田康夫もいなくなったんだ。
自分たちで新しい人事を決めりゃあいいべさ。
人選なんか、銀行や取引先の商社なんかから、いくらでもできる。
いったい、株主たちは何を企ててるんだベ?」
そう言いながら、ケイは考えこんだ。
「指輪かな?だけど指輪の話に乗ってこなかった。三百万より大事な事なんだべな」
タエはコタツの上の指輪ケースを見た。ケースのフタが開いたままになっている。中にあるルビーの指輪は確かに綺麗だ。だけど、実生活には何の役にも立たない。綺麗なだけだ・・・。
タエはケースを閉じて、自分が株主ならどうするか考えた。
「指輪は関係ねえべ。アイツ、タエが言うまで、指輪の話なんかしなかった。
目的は別ださ・・・・」
ケイはそう言ってなおも考えている。
「考えててもなんにもなんない。お風呂に入って寝よか?」
タエは考えるのをやめてタエに微笑んだ。
「ああ、そうだね。いっしょに入ろか」
緊張していたケイの顔に、いつもの笑みが浮んだ。
「うん、背中洗うよ」とタエ。
「頼むよ」
「湯上がりに、湯豆腐で一杯やろうか」とタエ。
「いいねえ」
二人は入浴と湯豆腐の準備をはじめた。
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