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二十 想定人事
翌日、二月二十五日、火曜。
夜になっても、近藤政夫から連絡は無かった。
テレビの報道によれば、除雪は進んでいるものの降雪が続いているため、公共交通機関は止まったままだったが、今日中に雪はやむだろうと予報していた。
インターネットのMarimura社員専用ホームページでは、公共交通機関が復旧する二月二十七日木曜から、Marimuraが営業を開始すると伝えていた。
「株主たちにからかわれたんだべか?」
夕食の鍋物をつつきながら、タエが呟いた。鍋の中は白菜や大根など実家から送ってきた野菜に、冷凍保存していた練り物を加えた、おでん風の鍋物だ。
「はいよ・・・」
ケイがタエのグラスにお酒を注いだ。ぐい呑みは、お酒を何度も注がねばならないが、グラスなら一回ですむ。
「では、ケイも・・・」
タエもケイのグラスにお酒を注いだ。
「からかわれてはいねえべさ。私たちは会議のオブザーバーだったんだ。
株主は私たちが話した事を考えてなかった。その事に気づいたんだべさ。
それなりの役目を果たしたってもんさ・・・」
ケイはそう言ってグビリとお酒を飲んだ。
「そう言う事なら連絡はこねえな。残念だあ~。
おでん、食うべさ・・・」
タエは鍋のガンモドキを箸で摘まんで小鉢に入れ、食べながらお酒を飲んだ。
「うん。おもしれえ事になると思ったのになあ・・・。
うめえな、これ!」
ケイもサツマアゲを小鉢に取って食べながら、お酒を飲んでいる。
「もし、あたしたちが社長になったら、レディース事業部長を誰にすべか?」
タエはグビリとグラスのお酒を飲んで、チクワを小鉢に取った。
「レディース事業部長をキョン(生方京子)にする。
デザイン企画室長はアツミ(赤井あつみ)。
第一デザインルーム、チーフデザイナーをサユリ(大林さゆり)。
そいで、デザイナーにナツ(中林なつみ)と本田兄弟を使うべ・・・」
ケイが笑いながらそう言った。
「アッハハハッ!それ、いやみだねえ~。だけど、いいねえ~。
専務と常務は?」
ケイは笑いながらチクワを食べた。
「専務と常務は鞠村まりえの件の責任を取らせてクビ!
経理部長もいるし、各事業部の営業部長を統括する統括営業部長がいるんだ。
鞠村まりえの息がかかった専務も常務も必要ねえべさ。
専務と常務は、民事訴訟に持ちこんで、鞠村まりえの横領と背任の責任を取らせるべさ」
ケイは、一呼吸置くようにグラスのお酒を飲んだ。
「オオッ!いいねえ~。
沢田警備課長をどうにかしてやらねばいけねえべさ!
あたしゃ、沢田さんを警備部長に昇格していいと思ってんよ!
今回の件で、ずいぶん貢献したべさ!」
タエはグラスのお酒を飲みながらそう言った。
「そしたら、沢田警備課長は警備部長に昇格だな・・・。
内藤刑事は、なんで、私たちの警護に来てたんだべ?上からの差し金か?」
また、公取が国公委へ指示して、警察庁から警視庁に指示が出たんだろうか?
ケイは内藤刑事の立場に疑問を感じた。
「まだ、本田兄弟の事件を捜査してるんじゃねえの?」とタエ。
「そういやぁ、横領の件、会議でなんも話にでんかったなあ。
内藤刑事は、アクセサリー事業部から紛失した三百万円の宝石の件じゃねえ、他の事を調べてんだべさ・・・」とケイ。
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