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街コンへ
“可愛らしい服装で来てね♡”
可愛らしい服装ね。
髪をポニーテールにして、スカートに着替えて出掛けた。
「やっぱり、彩葉、私服はホントおしゃれだよね。いつもどこで買ってんのよ。」
「特定のお店で買ってない、いつも良いな〜って思ったところで買ってるから店名見てない。紗季も今日おしゃれじゃん。可愛い。」
「ホント?男子ウケするファッションにしたの。」
会場に到着し、番号を渡される。
最後に、気になった人の番号を紙に書いてマッチングしたら、めでたくカップル成立。
実を言うと、彩葉自身こういう大人数の場所が少し苦手だったりする。
幸いこのイベントは、自分から話しかける事はなく、男性側が時計回りに進んで行く。
女性は席でただ待つ、と言う流れである。
大人数ではあるけれど、その中にポツン、といるという事ではないだけまだマシだった。
趣味や、好きな食べ物・嫌いな食べ物、職業から、異性のタイプ、フェチなど記入する欄がある。
その紙をお互い見せ合い、紙を見ながら会話を楽しむというものだ。
そして、持ち時間は10分。
この短い時間の中で、どこまで相手を知り尽くすかが重要だ。
「読書ですかね。」
「賢そう!」
読書をしているだけで、“賢そう”という感想が来るとは思わなかった。
普通は、“どんな本を読んでいるんですか?”と会話が続くようにするものじゃないのか。
案の定、会話はそこで終わってしまった。
25、6の見た目に茶髪。
読書=賢い、という言葉が出るのはチャラい男か、バカか天然の発言だと思う。
“賢そう”と言う発言の裏には、少しバカにしたような感じがするのは彩葉の勘違いだろうか。
少し、嫌味っぽく聞こえる。
チャラい人が、ガリ勉を勉強ばかりしている可哀想な子みたいな顔で見ている。
職業を見ると、美容師と書かれている。
彩葉の偏見かも知れないが、美容師=チャラいと思ってしまう癖がある。
実際、友人が美容師の卵と付き合った時に合わせてもらったが、中々のチャラさだった事が記憶の片隅に今も在り続けているのが原因でもある。
紗季は、“美容師は、客商売の仕事だから言葉遣いはちゃんとしていると思うけどな。
彩葉の偏見だよ。”と言われる始末。
友人の相手が良くなかっただけだと思っておこう。
10分毎に回転する。
その中で自分がいいと思った相手を紙に書く、と始めに説明を受けたが、10分では相手の何も見えてこない。
とうとう、全員周り終わったようで記入タイムが設けられた。
「どうしよう……。」
10分しかなかった上に、30人近い人がいる。
記憶を蘇らせようとするが、蘇ってきた記憶の中に良い人なんていない。
チャラそうな人、タイプじゃない人、変な質問をしてくる失礼な人。
それにフリーターもいたな。
今日はハズレのイベントなのか。
無記名で出しても良かったが、それだと来た意味がないと思いまだマシな人を記入した。
7番と28番の人。
7番は、スーツ姿にメガネとやり手な感じだった。
一方、28番は童顔の可愛らしい感じの人だった。
記入終了のアナウンスが流れ、スタッフさんが紙を回収し集計をする。
「では、これより見事カップル成立を発表します!なんと、3組カップルが成立いたしました‼︎番号をお呼びいたしますね。まず、9番と20番のカップルです!拍手〜。」
前に出てきた二人は、身長差のあるカップルだった。
彩葉の番号は、11番。
呼ばれるか呼ばれないか……。
「続きまして、男性7番、女性は……。」
彩葉が記入した人の番号が呼ばれた。
女性の番号が11ならカップル成立。
「女性は……、12番!」
惜しい、番号1つ過ぎてる。
そして、彩葉の番号が呼ばれる事はなかった。
紗季の方はどうだったんだろう。
「紗季!どうだった?」
「彩葉ぁ〜、ダメだ。中々難しいね。そっちは?」
首を振った。
「そうか、やっぱアレかな。人数が多過ぎる?30人だもんね。少人数の街コンで攻めれば良かった〜。」
「でも、意外と楽しめたよ。こういう街コンもあるんだと思って!」
「そう?なら、良かった。ゲット出来ればもっと良かったんだけどね。ね、カフェ行こうよ!彩葉とカフェでお喋りの方が楽しいから。」
LINE交換をしているカップルを横目に、紗季が楽しそうに話している。
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