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不眠
今夜も眠れそうになかった。
厳密にはある瞬間には眠っている筈なのだろうが、それは眠りというには余りにも浅く、まどろむと言った方がいい程度の時間と体感でしかなかった。
おれは舌打ちをして寝返りを打った。態勢を変えたところで、何かが変わる筈もなかった。闇になれてしまった眼で、部屋の壁を、ブラインドのすき間から差し込む僅かばかりの灯りを眺めるだけの事だ。夜が底に達する頃には一層冷えてきた。自分の吐く白い息を、俺は間近で見つめた。
睡眠薬を飲みだして随分になる。最初は少し効いていた期間もあった気もするが、人間というのは薬に頼り出すと自分で眠る事をしなくなるのか、すぐに薬を飲まずにはほぼ完全に眠れなくなり、暫くして効かなくなった。
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