朝7時45分、三両目、前の扉

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「お父さんとは、絶対に同じ車両には乗らないから!!!」  この度、めでたく女子高生になった娘は、年頃よろしく俺を毛嫌いする。  娘が産まれた時、俺の母に「娘があんたを嫌うのは順当に育った証だから、拗ねんじゃないよ」と言われて「わかってるよ」と年頃の時には父を毛嫌いし「お父さんのパンツと一緒に洗濯しないでって言ってんじゃん!」と叫んでいた妹を見て育った俺は、父親ってそんなもんじゃねぇの?と納得してたけど、いざその立場に立ってみるとこれがまた寂しいのなんの。  俺より先に家を出るし、営業の帰りにたまたま見かけても、フイっと目を逸らされる。  順当に育ったっていっても、これはかなり寂しいです、母上。  そんな四月も漸く慣れて、もう娘は別世界の人みたいに訳の分からない言葉を話し出した五月。  GW明けに「この休みに何があったんだ!」と言いたくなるくらいに、一段とキレイになったさと君は、次の駅で乗ってくるこうた君にハニカミながら近づき、指を絡めーいわゆる恋人繋ぎというやつーて、それはそれはしあわせそうだったのに。 「久しぶり」  と声をかけてきたのは、まさ君で。 「よう、あの性悪と別れたんだってな」  こうた君の呆れたような、怒っているようなそんな声に少し驚いて「誰だお前」と不機嫌な態度を露にする。
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