朝7時45分、三両目、前の扉

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 気持ちのいい朝だった。  差別のある当たり前の社会で、それだけじゃないんだ、俺たちだってちゃんと分かってるよと声を出したのが、その差別を公明正大に、声高に豪語していた世代の俺たちだったのが誇らしかった。  時代は変わるんだ。俺たちだって変わるんだ。  顔見知り程度の高校生数人に、深々と頭を下げられ「いいのいいの」「何もしてないから」「あー、ね?」と盛大に照れた大人はかなり見物だったろう。  その日の夜、妻にこの数週間の話を纏めて話した。  どうだ、俺たちだってやる時にはやるだろ? 「パパも、人の親だからねー。見てられなかったんでしょ」  とくすくす笑う妻はとてもしあわせそうで、この人と添い遂げたのは間違いじゃないなと思った。 「ま、パパの自己判断だからお小遣いの追加はないけどね」  間違いじゃないと思ったのに、後悔してるのはなんでだろう。
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