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それからは、さと君も少しづつ持ち直して口の端が上がる程度だった笑顔が、歯を見せるようになり、小さかった笑い声も徐々に大きくなった。
さと君の一駅後に乗ってくるこうた君も、さと君が大事だというのを隠さなくなり、ベタベタとすることはないけれど、必ずさと君と向き合い、友だちのそれとは全く違う距離で、どことなく甘い雰囲気を醸し出していた。
朝、二人のフワフワした甘い雰囲気にあてられ、夜には妻とイチャイチャする日が続くと、季節はいつの間にか秋を過ぎて初冬になる。
北の方で初雪が観測されましたと朝の情報番組でアナウンサーが言えば、こっちもそろそろマフラーが必要だねと妻が新しい物を用意してくれる。
いつもより少しだけモワモワした車内は、それでも彼らの甘い恋に癒され、騒がしい子たちにくすくすと笑いが出る。
さと君はほんの少し、可愛いからキレイといった感じになった。
冬を前に、こうた君と少し進んだんだろう。二人を包む雰囲気もただ甘いだけじゃなく、しっかりした・・・なんていうか『恋人』という雰囲気のものになってきた。
こうた君が一方的に好きだと言っていたあの時から、さと君もそれに応えて、その想いが天秤で釣り合うようなそんな感じで、もう 似非父兄としては「高校生ではまだキスまでだぞ」とか「そんなに近づいたらダメだ」とか、先輩がよく「ウチは男の子しかいないけど、ドラマ見ると娘を嫁に出す気持ちがよく分かる」と言っていたのを思い出して「あぁ、この気持ちか」と納得してみたり。
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