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「飯だ」扉の隙間から、まずい食事が差し込まれる。
「ウウ・・・」アウロスは、ボロボロになった身体を庇いながら食事を啜った。
北の塔に幽閉され、毎日の拷問。アウロスはすでに死を覚悟していた。
命に代えても、愛するエストリアを守らねばならない。アウロスの心は穏やかであった。
突然ドアが開いた。
ドサッ、となにか大きな物が放り込まれる。
「出ろ」看守が二人やってきて、アウロスを担ぎ上げた。
アウロスは、遂に処刑されるのだと思った。
ところが、辛うじて見える視界に入ってきたのは、別の看守が寝ている姿だった。
「これは・・・」
「司祭長、お助けに参上しました」聞き覚えのある声だ。
「とりあえず、この袋の中にお隠れ下さい」
アウロスは、大きな死体袋の中に放り込まれた。
「よし、じゃあ仕上げだ」一人が、アウロスの部屋の中に松明を放り込む。
たちまち燃え上がる室内。もう一人がドアを閉めた。
「よし急げ」二人は慌ててその場を離れた。
火事騒ぎの中、二人は悠々と死体袋を担いだまま北の塔から出た。
「そんなに急がなくたって、あの部屋の中以外は燃えやしないよ」
「ほんと。あれだけがっちりとした石造りならな」
宮殿から悠々と脱出した二人は、看守の服を脱いだ。
「司祭長、もう大丈夫でしょう」
「これは・・・アロン!ラミレス!」
「シッ!お声が大きい」
「我らの隠れ家へ」
三人を乗せた荷車は、エスタシオのどこかへ消えた。
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