<第一章:アホウ鳥の翼>

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「飯だ」扉の隙間から、まずい食事が差し込まれる。 「ウウ・・・」アウロスは、ボロボロになった身体を庇いながら食事を啜った。  北の塔に幽閉され、毎日の拷問。アウロスはすでに死を覚悟していた。  命に代えても、愛するエストリアを守らねばならない。アウロスの心は穏やかであった。  突然ドアが開いた。  ドサッ、となにか大きな物が放り込まれる。 「出ろ」看守が二人やってきて、アウロスを担ぎ上げた。  アウロスは、遂に処刑されるのだと思った。  ところが、辛うじて見える視界に入ってきたのは、別の看守が寝ている姿だった。 「これは・・・」 「司祭長、お助けに参上しました」聞き覚えのある声だ。 「とりあえず、この袋の中にお隠れ下さい」  アウロスは、大きな死体袋の中に放り込まれた。 「よし、じゃあ仕上げだ」一人が、アウロスの部屋の中に松明を放り込む。  たちまち燃え上がる室内。もう一人がドアを閉めた。 「よし急げ」二人は慌ててその場を離れた。  火事騒ぎの中、二人は悠々と死体袋を担いだまま北の塔から出た。 「そんなに急がなくたって、あの部屋の中以外は燃えやしないよ」 「ほんと。あれだけがっちりとした石造りならな」  宮殿から悠々と脱出した二人は、看守の服を脱いだ。 「司祭長、もう大丈夫でしょう」 「これは・・・アロン!ラミレス!」 「シッ!お声が大きい」 「我らの隠れ家へ」  三人を乗せた荷車は、エスタシオのどこかへ消えた。
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