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<第二章:闇の凶戦士>
「ほほう、遂にアウロスが死んだか」ブリアトーレは、嬉しいような残念なような顔をした。
「はい。獄中にて看守の目を盗み焼身自殺を図ったそうでございます」例の如く、ナイが報告する。
「しかし自殺とは・・・」
「拷問に耐えかねたのでしょう、それでも秘密を漏らすよりは死を選ぶとはさすが司祭長を勤めただけのことはございます」
「しかし奴めが死んでは抜け穴も分からぬではないか」
「そこででございます。この際、逆に抜け穴を埋めては如何でしょう」
「埋める?」
「左様でございます。埋めてしまえば先王派も使えますまい」
「なるほど・・・よし、すぐそのように計らえ」
「かしこまりました。それともう一点」
「何事だ」
「リシア様の事にございます」
「見つかったのか」
「エルロンのガホールにて」
「エルロンだと、何故そんなところに・・・何か不穏な動きを企んでおるのではないだろうな」
「それは分かりませぬが・・・なかなかの剛の者を供に連れているようで」
「ウーム、できれば捕らえておきたいが・・・エルロンでは大掛かりな動きはできまい。まあよい、手は打ってあるのだろう?」
「一応打ってはございますが、我が手の者ことごとく討ち果たされたようにて、発見後の続報が入って参りませぬ」
「そうか・・・そちの事だ、またよからぬ事を考えておるのではないか」
「滅相もございません。すべて陛下の仰せの通りに」
「ではなるべく極秘裏に、きゃつめを捕らえるのだ。決して殺してはならぬ」
「かしこまりました。しかし、何故そんなにこだわるので?あのときも、父王と一緒にまとめて始末しておけば良かったものを」
「だまれ、お前には分からぬのだ。余が今までどれだけの屈辱を味わってきたか・・・王家の血が流れているにも関わらず王にもなれず、かといって力ずくで王位を奪うこともできず、逆に王家を守ることを義務付けられてきた余の屈辱と葛藤を・・・余が味わってきた屈辱を兄王の息子達に味あわせて何が悪い!もっともあの長男と次男はたいして屈辱など味わう間もなく丸ごと女になりおったがな。だがそれはそれで余の駒になったということだ。しかしあのブライスが逃げおおせたと聞いたとき、余は腹立たしかったがある意味では嬉しかった。あやつめに余と同じ、いやそれ以上の屈辱を味あわせられるのではないかとな。中身はともかく今の奴はどこから見ても女だ。それも人並み以上に美しい・・・自分の存在が呪わしくなるのは、むしろこれからだろうよ。王子と名乗れず、男とも名乗れず、男達の欲望に満ちた視線にさらされ、女達からも嫉妬に満ちた視線に晒される。それは誰にも分からぬ孤独だ」
「おうおう・・・陛下のお気持ちはしかと承りました。では仰せの通りに致しましょう。ともかく監視だけは絶やさぬように致しますゆえ」
「おう。余も少し気がたかぶって余計なことを言ったようだ。確かに捕らえるのは難しかろう、無理ならばそちの言うとおり監視だけは絶やすな。だがしつこいようだが決して殺してはならぬ。それと、エイガンらの監視を強化しておけ。これ以上先王派を死なせては、せっかく収まりかけた国民が余計な騒ぎを起こしかねん」
「かしこまりました」
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