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「これはよい」リリスは上機嫌だった。
「アホウ鳥の翼」号は好天の中を快調に進んでいた。
「うう・・・」対照的に船酔いに苦しんでいたのがグランツである。
「リリス様・・・帰りは陸路に致しましょう」
「何を言う。海路の方が早く、安全と言ったのはそなたでないか」
「しかし・・・うっ」グランツは、舷側に行って吐いている。一刻も早く陸に上がりたい気分だった。
「リリスさん」船長が現れた。
「物は相談だが、このままクレンツに向かうには食料と水が心細い。ガビーに寄って仕入れたいが、如何な物か」船長は、やけにかしこまっている。
「それはかまわん」リリスは、即答した。
「ありがとうございます」ゾロンはにこにこと頭を下げた。
「また船長、あの店へ行くんで」デューンが口を挟む。
「う、うるせえ。余計なことぬかすな」
「あの店?」ルーンがつっこむ。
「船長は、ガビーに行きつけの店があって、そこの女主人は」
「黙れ!それ以上言うんじゃねえ」ゾロンが、デューンを黙らせる。
「そういうことか」
「まあ、その」ゾロンはしどろもどろだ。
「どちらにしろ食料と水は心細いのだろう。一度ガビーに寄ろう。もしかしたらクウの情報が手に入るやもしれん。それに・・・」
リリスは、グランツの方を見た。
「グランツも、少し不憫なのでな」
「かたじけのうございます・・・面目ない・・・」
グランツは、真っ青な顔をして頭を下げた。
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