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<第一章:アホウ鳥の翼>
「ねえランブル、今度はいつ来てくれるの」
「このところちと忙しゅうございますので明日明後日は無理かと」
総参謀長ロウガン将軍麾下の武将ランブルは、脱ぎ捨てた着衣を身につけながら答えた。
「ねえ、そんなこと言わないで。また明日の晩、これは命令よ」
「されど・・・もしこのことが将軍閣下の耳にでも入れば、私めは終わりでございます」
「それ分かってしてるくせに・・・ねえお願い、また明日も」
「分かりました。何とか言って部下に任せましょう」
「そうよ。それでこそ大公騎士団一の勇士、猛将ランブルってものだわ」
「では明晩」
「気をつけてね。誰かの目に付いたら厄介でしょ」
「は、ご心配なく」
ランブルが出ていく。
ふう、彼女は一人ため息を付いた。
突貫工事の末とりあえず出来上がった仮の王女宮に北の塔から引っ越してきて一ヶ月が経つ。
このところブリアトーレの監視も緩くなり、ナイもほとんど姿を現さない。リトニアは王女としての生活に全く違和感なく馴染んでおり、知らぬ者が見たならば、この美しい女が実はブリトニー王子であったことなど信用し難い事であるのに違いなかった。
それだけではない。今まであまり大公傘下の人間と関わりを持ってこなかったためか、最近王宮で開かれるパーティーの類では、彼女の美貌は常に男達の視線の先にあった。
もともとパーティーや遊び好きで、「ブリトニー殿下はこと女だけは欠かしたことがない」とまで言われ父王を悩ませていた彼女である。女として男を手玉に取る楽しみを覚えるまで時間はかからなかった。
結果、彼女の回りには男達が群がり、さらに王達の目を盗んで王女宮の中まで男を引っ張り込むことも多かった。それを知るのは侍女のミリアのみである。ミリアも、敢えて止めようとはしていない。ナイの命令は、「リトニアを女らしくすること」であり男に愛される事もその内だとミリアは思っているのだ。
ここ一週間ほどのお気に入りは、このランブルである。
しかしそれもいつまで続くかは分からない。とにかくそう長くないのは確かなようだ。
「さあて、次は誰にしようかしら」彼女はもうつぶやいていた。
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