約束

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約束

 私は音量を絞ったテレビの画面を見つめている。幼児が行方不明というニュースは流れてこない。  夕方のニュースでも、深夜のニュースでも流れることはなかった。  結局、三日間の有給を取り女の子と過ごした。その間も流れることはなかった。不安を抱えながらも満たされた幸福感に浸っていた。  女の子はまったく手のかからない子だった。だから多少の心配はあったが、その後仕事にも出ることができた。待つものがある家の空気は、今まで孤独に暮らしてきた空気を一変させた。寝酒も必要なくなっていた。  あっという間に一週間が過ぎた。それでも行方不明のニュースはまったく流れない。普通なら、あれだけの痕跡があれば即逮捕されているはずだ。やはり、届け出をしていないのか。それならそれでかまわない。  家には女の子のためのものが増えていた。店員に選んでもらった服。読み聞かせの絵本。お絵描き道具。  嬉しいことに私の顔を描いてくれた。そういえば結実は私の顔を描いてくれたことがあっただろうか? もし描いたならばこんな感じだったんだろうか。白い画用紙に三日月が描いてある。そこには女の子が腰かけている。それに向かって、橋の上に立つ私が手を振っている。夜は決して暗くなく、明るい藍色で塗られ、浮かぶ月は白いが、画用紙の白ではなく、女の子の顔色のように優しさを内包したような白だ。絵の才能があるのでは? などと親バカみたいなことも思ってしまう。 「ねえ、夏になったらほたるを見に行こうか? きっときみなら上手く描けるよ」  結実に見せたかった。舞うほたるの光が、やわらかく川面に映るあの景色を。  急に頬を伝った涙を、女の子の短くてやわらかな指が拭ってくれた。  私はそっと抱きしめた。
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