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それにしても、理由はどうであれ立派な誘拐犯になってしまった。親が警察に届け出をすれば、すぐに分かってしまうだろう。立ち寄った派出所、そこから乗ったタクシー、食料や日用品を買いそろえたコンビニエンスストア。それらの防犯カメラには確実に映っている。それに、タクシーの運転手やコンビニエンスストアですれ違った若い男女などは、だいぶ訝しんでいたように思われた。私が女の子に話しかける態度がおかしかったのだろうか? 三十九歳の私とは年齢的に親子でも違和感はないはずだが。いや、所詮私がそう思っているに過ぎないのかな。
そもそも、なぜ女の子はあそこに一人でいたのだろうか? 虐待。そんな二文字が頭に浮かんではいた。しかし、顔には殴られた形跡もないし、痩せ細ってもいない。もちろん、服の下は分からないが。服といえば、全体的に薄汚れていない。ちゃんと洗濯してあるようだし、ぼろぼろでもない。肩までの髪も脂ぎってはおらず、ちゃんとお風呂にも入っているようだ。しかし、虐待はそれだけじゃない。無関心。記憶の澱をまとめて形にして、そのまま単語になった。最低限の世話はするが、まったく子供に興味がない親。
私は思わず勢いよくグラスを煽った。さっきまで高級品だった酒は安物に戻っていた。
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