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私はその日商店街に散歩に来ていた。
ずらりと並んだお店。
私には、有名なファンタジー小説から名前をとったお店や魔法に携わる品ばかりしか存在しないように見えた。
魔法関係のものなら目を皿のように探し、何が何でも手に入れたがった、昔の私。
いつまでも探し続けていたけど、こうしてみるとあっけないくらい見つかりやすい場所にポンとあった。
それも、たくさん。
何だってそうだ。
欲しい時や見たいときには見つからないのに、その逆の、全く必要ない時にはあっさり発見されたりする。
この場合も、例外ではない。
私は今、こんなものは見たくない。
家にあったフィギュアや魔女の物語を全部捨てたりあげたりして、前はごった返していた部屋はスッキリして見えた。
なのに、外に出るだけでいろんなものが目を刺激する。
なくなったものが、失ったものがどれほど大切だったかが分かる。
でも、外に出ずにはいられない。
動かずにはいられない。
ジッとしていたらますます悲しみにのみこまれて、抜け殻だけになってしまいそうな気がした。
だから、散歩と言うより、気晴らしに、少しでも頭をからっぽにして悲しみを追い出すために、私はここに来たのかも知れない。
グッと涙がこみあげた。
ああ、私はバカだ。
あの時の私は、なんてバカだったんだろう。
小学六年生にもなって、魔法を本気で信じていたあの時の私は、ひどく惨めで愚かに思えた。
あれから、何度自分を責めただろうか。
何度魔法人の描かれたタペストリーや本や人形や、クローゼットにかけてあったゴスロリを睨み、手を伸ばして引き裂こうとしただろうか。
前まで何よりも価値があると思っていた、世界中のお金を積まれても渡したくなかった物が、一瞬にして色あせ、意味もなくなっていた。
気づけば、部屋は空っぽだった。
何を捨てて何を譲って、何を古着屋や古本屋に出したのか、よく覚えていない。
いつもは閉められている黒く厚いカーテンは開け放たれ、窓の外に青い空と家の屋根だけが連なっていた。
ただ、ガランとした部屋と、磨き込まれた窓に映った私だけが、目に映っていただけだ。
三百六十度見回しても、机と椅子の他に何もない世界。
窓の中の私は、ちっぽけで汚れていて、ボンヤリとしていて、何より光っていなかった。
目はキラキラしていて、全身から輝くばかりの目には見えない光を放ち、眩しくてエネルギッシュだった私は、どこかに消えてしまっていた。
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