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私はアケコ、『元』魔法オタクの魔女大好き少女。
お店を歩いては魔女の宅〇便やハ〇ーポッターからとったとみられる名前の店や商品をあさり、人形・ぬいぐるみ・パズルやプラモデルは勿論、どんな魔法好きにも負けないと自負するほどの勢いでグッズを集めまくっていた。
魔女や魔法使いが登場するアニメは欠かさず見たし、家では一日一回ゴスロリを着てみるという変わった子。
掃除機に対して何か強いこだわりと恨みがあるらしいお母さんのせいで掃除用具がホウキなのをいいことに、しょっちゅう部屋に持ち込んではまたいでジャンプ。
呪文や魔女を召喚する方法を暗記するまでは絶対にベッドに入らず、クラスでも魔法の話しかしないし出来ない。
そんな私には当然友達などできず避けられる存在となったのだが、たった一人友達がいた。
同じクラスのキホコ、通称きいちゃん。
私がどれだけ魔法の話をしても嫌がらずに聞いてくれて、相槌を打ったり笑ったりしてくれた。
私は自分の話を聞いてくれる人がいるだけで嬉しかったけど、今思えば友達が出来たことに何より喜んでいたのだと思う。
魔法一筋の私は、当時魔法以外の事で自分は喜ばないと思い込んでいたから、気づかなかっただけだろう。
私はきいちゃんの事が大好きだった。
静かで控えめで目立たなくて、内気だけど人の心をゆるやかにしてくれるきいちゃん。
人前には出たがらなくても、きいちゃんには凄い能力があるのを私は知っている。
きいちゃんと話すと、怒りっぽい人も穏やかな顔になる。
さっきまでヒステリックに騒いでいた声が甲高いおばさんやピリピリしている友達も、きいちゃんの目を見て声を聞いて落ち着かせてもらうと、ポワンとした柔らかくて軽い笑顔になる。
なんだかそれは、タンポポ、みたいな。
そして自然と空気が和んで、皆自分でも気が付かないうちにニコニコしている。
私には、できないことだ。
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