抱きしめていい理由

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抱きしめていい理由

「…え? これ可笑しくない?」 ちょっとだけ押し返せば、 その “ ちょっとだけ ” を簡単に引き寄せる彼が不思議そうに、え? と言った。 「どこがどう可笑しいの?」 今度は私が、聞き返す番だった。 「どうって…、理由なんて、この状況に決まってるでしょ」 ぎゅうぎゅうに力を込められる腕のなかに、なんで私がおさめられてるのか、って。 そういう話をしているのだ。 「うーんそれは難しいね」 「難しくも何ともないんじゃない?」 「あんたがそう言うんならそーなんじゃない?」 「ね、意味わかんないよ」 すこし不機嫌そうな声が降ってくる。 聞き慣れた声なのに、体温につつまれていると妙に心音が大きくきこえて身じろいだ。 冷えた風が手の甲を撫でて再び気づく。 ……私、こんな時間に なんでこんな事態になってるの。 「ちょっと。離して」 「むりむりむり、だって寒いし」 「呼び出したのはそっちでしょ」
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