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だから許したくなるの、と付け加えるように言った彼の顔から勢いよく手を離した。
だって、何か。
「あ、顔真っ赤になっちゃった」
「う、うるさいなっ」
…らしくないのが悪いんでしょ!
「しかたないじゃんっ。初めて聞いたよそんなの! いま初めて! あかくなっちゃうのしかたないの!」
「えええ。なんで怒ってんの」
眉を下げて不思議そうに首を傾げているけど、この人の所為なのに。
らしくないことを言って、らしくなくこんな時間に呼び出して、だから私も柄もなく赤くなっただけのことなのに。
本当に…、何だか私が恥ずかしくて仕方ない。
「照れちゃって可愛いね」
「…可愛い私がものすごく困ってるの。だからからかわないで」
「ふふ、うん、無理そう」
揶揄いを含んだ視線を遮ろうと手を伸ばせば、彼の骨ばった手に掴まれて。
隙を伺っていたかのように顎を掬われ、驚く間もなく唇に彼の吐息がふわりと触れる。
「待っ、」
「むり」
思わず制止の声をあげた私に、彼は艶やかに微笑みをこぼして、触れるだけのキスを落とした。
それで終わるはずがないと踏んだのは間違いなく、二度目はすこし余裕を持たせるようにあまくて長い。
キスがあまいなんてそんなわけないくせに、あまいと思ってしまうほどに私は彼に毒されているのかもしれない。だからちょっと悔しくなる。
「朝、から、するキスじゃないから!」
「俺はしたい派だから。ほら黙って」
「あとでにして私がもたない!」
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