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「なるほど……。興味深い。大変、興味深い!」  書店の店長を務める私の彼、飯田弘嗣は目を爛々と輝かせていた。 「その能力、眠らせておくのは勿体ない。俺も協力するから、もっと開発してみよう!」  その日を境に、私からの前戯は全て物理的にではなくその不思議な力を使って行うことになった。  最初は弘嗣の胸の辺りをさわさわする感覚だったのが、開発によって研ぎ澄まされていくと彼の乳首をピンポイントで弄くることができるようになった。  彼にとってはその力を使って弄られた方が気持ちいいみたいで、実際に触れようとすると怒られさえした。 「あの力で触られてると、依子のもっと生身の部分で触られてるみたいで、余計に気持ちいいんだ」  恍惚とした表情でそう言う弘嗣はちょっと気持ち悪かったが、彼があまりにも気持ちよさそうにするので、私も止めることができなかった。  そんなある日、彼に突然異動の命令が下された。  元々彼は神奈川県の人間で、私の地元である仙台には転勤で来ていただけだった。  私にも仕事があるので仕事を辞めて彼について行く決心はすぐにはつかず、しばらくは遠距離で交際を続けることになった。  彼は私の力の開発を続けられないことを、何よりも残念がった。  私は、そのときには物理では到底触れることができないような彼の身体の部分を、繊細なタッチで触れることができるようになっていた。 「これをプラスに捉えようじゃないか。遠く離れていても、俺に触れることができるか。俺のことを思う強さがあるならば、距離の概念なんて超えられるはずだ」
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