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実は尻餅をついたお尻よりも、逸樹に掴まれた腕の方がじんじんしている。でも、それは裏を返せば彼の必死さの現れでもあったと思う。
直人が一緒ならば、さっきみたいな無茶はされないと思ったからこそ、葵咲は聞いてみることができた。
何だかよくわからないけれど、先程の逸樹の言葉を借りるならば、この二人、主導権を握っているのは間違いなく直人だ。
葵咲が、先の質問の返事を待って逸樹をじっと見つめると、逸樹は直人の様子を一瞬うかがってから、気怠げに口を開いた。
「軽トラ……」
それだけ言って、逸樹が視線を向けた先には、さっき彼が降りてきた軽トラが停まっていて。
「え?」
意味が分からなくて思わず聞き返したら、直人が口を開いた。
「だから……それじゃ何も伝わんないって、逸樹さん」
ムスッとして軽トラのほうに顎をしゃくる逸樹の肩をポンと軽く叩くと、「ね、あれに乗っけたままってこと?」と指さす。
そんな直人に逸樹がうなずいて。
葵咲は、何が乗っているんだろう?と二人の視線の先を追った。
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