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逸樹、直人と別れた葵咲は、軽トラのところに移動してからあった、あれこれを思い出して思わず顔がほころんでしまった。
それと同時に、部屋の片隅に置かれた段ボール箱を見て、安請け合いをし過ぎてしまったかもしれないという一抹の不安が脳裏を過ぎったのも事実で――。
(あーん、でもあの状況では他の選択肢なんてなかったものっ)
次の瞬間には頭をふるふると振って、その思いを断ち切る。
あれこれそわそわとしながらも、葵咲が何とか気持ちを切り替えて、レポートを!と思えたのは、それを早く済ませて理人に買い物に連れ出してもらいたいと思っていたから。
(理人は……私のおねだりを聞いてくれるかな)
今までこんなに集中して課題に取り組めたことはない、と自分で自画自賛したくなるほどの集中力で、葵咲はレポートを書き上げた。
時計を見ると、課題にチャレンジし始めてから二時間ちょっとしか経っていなくて。
(理人の仕事が終わるまであと三十分……)
思いながら、理人へ、何も現状を報告していないことに思い至った。
(うー。やっぱり少しぐらいは心の準備をさせてあげないとマズイ……よね)
思いはしたものの、理人に叱られやしないかとか思わないこともなくて……葵咲は一人悶々と思い悩んだ。
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