名前の由来

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名前の由来

「はい」  葵咲(きさき)がインターフォンに応じると、画面に逸樹(いつき)直人(なおひと)が映し出された。  理人(りひと)が子猫を抱いたまま、葵咲の背後に来て、「お隣さん?」と画面を覗く。 『山端(やまは)と……』 『三木(みき)です。夜分にすみません』  逸樹がぶっきら棒に名乗りをあげたのを(さえぎ)るように、直人が口を開いた。 『猫、どうなったかな?って思って』  そこまで聞いた葵咲が、おもむろに理人を振り返った。 「その子を拾ってくださった方たち。……あの、お通ししても、いい?」  聞けば、理人は一瞬眉根を寄せたのち、「いいよ」と言った。  葵咲は、理人のその表情の変化に気づかなかったのか、にこやかに微笑むと、玄関へ走って行ってしまう。  その背中を見つめながら、理人は小さく溜め息をつく。 「僕がいない間に他の男と親しくなるとか、お仕置きものだな……」  (つぶや)かれた言葉に、理人の腕の中の子猫がニャーン、と合いの手を入れる。  理人は、子猫の頭を優しく撫でた。
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