名前の由来

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「初めまして。えっと、山端(やまは)さんと……三木(みき)さん、でしたっけ? 僕は彼女とここに住んでいる池本です。さっき帰ってきたばかりなんで、いまいち状況が把握できていないんですが。――少しお話をうかがっても?」  本心ではモヤモヤイライラ炸裂中(さくれつちゅう)理人(りひと)だったけれど、声と顔は極めて穏やかににこやかに。加えて、子猫の頭を撫でているので、ほんの少しだけ気持ちが(やわ)らぐ。  でも、葵咲(きさき)だけはそんな理人の様子をおかしいと勘付いたらしい。 「……理人?」  疑問形で小さく呟くと、理人の服をほんの少し引っ張ってきた。  理人はそれを視線だけ流して黙殺すると、「立ち話もなんですし、中へどうぞ」と道をあけた。  そうしておいてから、 「葵咲、ごめんだけど……お茶、頼めるかな?」  有無を言わさぬ調子でにっこり笑ってそう告げる。  普段ならお茶なんて、理人が葵咲の分まで()れているくらいだけれど、今はとりあえずこの男たちから葵咲を遠ざけたい一心だ。 「……あ、うん、分かった」  何となく理人の不機嫌さに気付いている葵咲が、大人しく彼に従ってキッチンへ消える。
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