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第1話
一瞬目が眩むほどの光に包まれ、少し遅れてカシャという音が追いかけてくる。さらに追い打ちをかけるように指示が飛んできた。
「次は視線を少しずらして!」
「右肩を少し上げてみようか!」
「ラスト三枚行きます!」
一連の流れを三回繰り返すと、現実が戻ってきた。
配管がむき出しになっている天井。私を中心に円を描くように並べられた機器。足元から背面にかけて垂れ下がっている布。そして出番を待つ女の子が纏う着物の色や簪の輝き。
慌ただしいけれどどこかゆったりとした雰囲気の撮影現場なのはここが和服専門のブランドだからなのか。
「雛菊ちゃん、お疲れ様。もう今日の撮影は終わったから、上がっていいよ」
「お疲れ様です。ありがとうございます」
スタッフの一人、恵理さんが声をかけてくれた。
彼女には私と他に二人のスケジュールを管理してもらっている。
「また彼の所に行くの?」
「はい。まだ面会時間には間に合うから行こうと思っています」
「そう。あんまり無理はしないでね」
恵理さんの心配そうな表情に笑顔で返し、控え室に入る。
待機してくれていた髪結いさんと男衆さんに髪や着物を戻してもらった。
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